携帯小説『恋空』美嘉

話題のケータイ小説を読まないでいるのは駄目かなぁと考え、今一番旬であろう『恋空』にチャレンジしました。でも携帯電話で読むのはだるいので、とりあえず前編の3分の2をパソコンでざっと読みました。そして余りにもちゃんぽんな展開に疲れて通読を断念し、とりあえず途中の流れはだいたいこんな感じに進んでいくんだろうなぁと判ったので、どう終るのかを知るために完結編と後書きをざっと読んでみしました。うーん、やっぱりちゃんぽんだなぁ……。
何がちゃんぽんかというと、この作品を読んでいると、ろこが9〜14歳辺りに読んでいた少女小説や少女漫画に使われていた設定やキャラクター、作風やフレーズなどがスパーン、スパーンと文脈無く入り乱れているのです。今、思いつく限りで言うと、花井愛子や折原みと的な改行、『ホットロード*1的なヤンキー像、『ONE−愛になりたい−』*2的な不幸の連続、伊東千江的な切ない展開などですが、もっと大まかに言えば1980年代後半のティーンズハート(講談社X文庫)や少女漫画雑誌でいうとマーガレット、フレンド辺りかしら……。でもあの頃の少女漫画雑誌って、雑誌毎にある程度の特色は持たせていたものの、1つの雑誌の中に結構色んな作風の作品があったりしたので、あまり限定する必要も無いのかもしれません。それら1980年代後半の作品達が、『恋空』たった1作品に「これでもか! これでもか!」と詰まっていて、それがとってもちゃんぽんだなぁーと。そんな作品なので、ろこは読み進めていく内に「一体ろこは誰が書いている作品を読んでいるんだろう? 登場人物もみんな人格がコロコロ変わってキャラクターが定まってないし、共感も感情移入も出来ないや……」と読むのが辛くなってしまいました。
ここまでですと、ろこはこの作品を貶しているように思われるかもしれないのですが、実はあまり貶すつもりはありません。とてもよく出来たお話だなぁと思いました。少女漫画の良いとこ取りな上に、主人公の女の子がコーエーネオロマンス・ゲームばりのモテ設定なのです。ここまで躊躇せずに書けるのは凄いと思ったのです。わふ。ただ今回ろこが初めてケータイ小説を読んで疑問に思った事は、作者の作風と読者層です。最近「ケータイ小説は中学生の間で読まれている」という記事をインターネット上で目にしたのですが、ろこが『恋空』を読んだ限りでは「中学生が読んで楽しいの?」と疑問に思ったのです。なんというか、作風が古臭いと言うか、中年臭いというか……。後先考えないような無鉄砲な行動を起す中学生を描いている筈なのに、(ろこの勝手なイメージですが)中年の人が描きそうな20代位の男女の言動だったりして、全然キャラクターに若さが感じられないのです。そうそう。お昼のドラマとか韓流ドラマでやってそうな感じのノリなんです。そういうの作品を今の中学生が読んでも面白くないんじゃ……。
と、ここまで書いて気がつきました。そうか。ケータイ小説って主婦も読んでるんだ。『Deep Love』的なのは10代に読まれてるのでしょうけど、『恋空』的なものは、ハーレクイン小説を読んでたり、読んでいなくても気になっていたりする人がケータイ小説なら手軽に読めるんだ。それにハーレクイン小説的な話が好きな人は沢山居る訳で、そういう人達がケータイ小説を読むんだ。ふむん、なるほどなるほど。
あともう1つ疑問なのが、ケータイ小説の中でも人気作品に付きがちな「この小説は実話をもとにしたフィクションです」という何とも奇妙な注意書きです。書かれている内容はフィクションとして描かれている他の小説や漫画、ネオロマンス・ゲームと大差ないのに、”実話をもとにしたフィクション”という魔法の言葉1つで『恋空』などの人気ケータイ小説は特別なものになり、そして読者は感動するようなのです。ケータイ小説の読者って、複雑なんだか単純なんだか……。ろこなんてフィクションだろうが実話だろうが、作品が自分に合ってさえすれば、なんの抵抗無く受け入れ感動しますけどね。『ごんぎつね (日本の童話名作選)』なんて、大人になっても号泣ですよ。ふわわわーーん。
……さて、かなり暴走気味に自問自答してしまいましたが、ケータイ小説ブームの実状って、こんな感じの理解でいいのかしら? わふぅ? 少なくともろこは女性なので女性視点で考えるとこんな感じなのかなーと思ったのですが……。まぁいずれにしても今回1作品(それも斜め読み)ですがケータイ小説を読んで、ケータイ小説の需要ってかなりあるんだなーと実感しました。ろこ的には新たな発見でした。わふ!

恋空〈上〉―切ナイ恋物語

恋空〈上〉―切ナイ恋物語

恋空〈下〉―切ナイ恋物語

恋空〈下〉―切ナイ恋物語